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森ちゃんの修理ブログ#16アポロの名器 A-360

今回紹介するピアノは東京都のF様所有の「アポロ A-360 1977年製」です。
此のピアノは、「チーク」というピアノとしては珍しい木材が使われております。

チーク材は高級列車として知られる「オリエント急行」や20世紀を代表する豪華客船「クイーンエリザベスⅡ号」の内装などにも多く使われた世界の3大銘木の一つです。
チーク材が取れる地域は、インドネシア・タイ・ミャンマーなどでインドから東南アジアに広く分布しています。

材質は、固く強靭で耐久性があり、天然の油脂成分が病害虫に強い性質をもたらしています。
天然の古木から切り出されたチーク材は特に耐久性があり、大変高価であります。
19世紀には造船木材として、その銃弾でも裂けない強靭な強さと、海水でも腐りにくい耐海水性が求められました。

今回の画像は撮影した環境の違いからか、ビフォー画像がかなり色濃く映っておりますが、同じピアノです。
修理仕様「④コース部分補修+内部修理クリーニング」で仕上げました。但し仕上げが艶消しの為、外装補修後に艶消塗料を吹き付けております。

ピアノに埋め込まれた真鍮部品は表面に艶消しの塗料が吹き付けられていますが、酸化被膜の発生は完全には防ぐことが出来ません。
そこで、研磨した後に再度艶消し塗料を塗布します。

ペタルについては、ピアノ本体から取り外して全体を研磨します。
分解・取り付けの手間はかかりますが、研き残しが無いよう手間をかけています。
ペタルと同様に真鍮で出来た蝶番も全て取り外して研磨しています。

④コースは基本的に部品交換はありません。錆を落として研磨します。機能的に不具合がある部分は完全に修理します。但し傷んだフェルト類は交換します。
妻土台と親板の角に打ち傷があり色が飛んでおりました。綺麗に補修して、艶消しを吹きます。
此のピアノは製造してから40年になろうとしていますが、一度きっちりと修理を行えば、今後20年以上綺麗な音と外装でお使いいただけると思います。

2016.11.03