原型
元の状態のピアノです。
通常のアップライトピアノと比べると非常に小さく、この通り、普通サイズの押し台車に乗ってしまいます。
通常のアップライトピアノは、一つの音に対して2本から3本の弦が張ってありますが(低音域を除く)、
このピアノはミニピアノ(トイピアノ)のため、一つの音に対して一本弦という珍しい仕様になっております。
弊社の旧工場の片隅にあった、廃棄される予定であったゼンオンブランドのミニピアノ。
小さいですが中身は通常のアップライトピアノ同様のれっきとしたアコースティックピアノです!
半壊状態になっており、もはや再起不能にも見えますが、弊社の技術で見事に復活。
弊社工場所在地である、磐田市公式のイメージキャラクター”しっぺい”のエンブレムをあしらい、
世界に一つだけのしっぺいピアノへと生まれ変わりました。
元の状態のピアノです。
通常のアップライトピアノと比べると非常に小さく、この通り、普通サイズの押し台車に乗ってしまいます。
通常のアップライトピアノは、一つの音に対して2本から3本の弦が張ってありますが(低音域を除く)、
このピアノはミニピアノ(トイピアノ)のため、一つの音に対して一本弦という珍しい仕様になっております。
先ず解体を行います。
極力母体が破損しないよう、丁寧かつ慎重に解体していきます。
ある意味では新品の組立よりも繊細さが必要な作業といえます。
アップライトピアノの裏面には、音の振動を外部に伝えるための響板と呼ばれる板が張ってあります。
響板は部分的に補修することも可能ですが、今回再生したピアノは特に状態が悪かった為、
響板と、これに付随する響棒・駒といったパーツを新たに1から制作しました。
元々ミニピアノ(トイピアノ)である為、響板は木材を余すことなく使用する事を重視して(コストダウン重視で)
制作されておりましたが、今回は折角なので多少のコストアップ覚悟で、
音色を重視した木目方向になるような配置を行い、新品当時よりも良い音色を目指した修理を行いました。
響板がいかに振動するかがそのピアノの性能(特に音質)を左右します。
響板の材質や木目の方向ももちろん重要なのですが、響棒の取り付け方を誤ると、
折角の響板の豊かな響きを殺してしまう事になりかねません。
そのため、響板のわずかな曲面(クラウン)に合わせて響棒の接着面(底面)を削り、
隙間なく、かつ余計な力(残留応力)のかからないよう細心の注意を払い取付します。
駒に対しても同様にクラウンに合わせて削り、接着していきます。
響板・響棒・駒といった音色を左右する重要なパーツの接着は、
膠(にかわ)と呼ばれる接着剤を使用しました。
響板張り込みの様子です。
ピアノのフレームは、弦の張力等に耐えられるよう、鉄で大変丈夫に出来ておりますので、
さすがにフレームはそのままでも使用できそうです。
しかし、長年使われてきたピアノですから、錆や汚れはそれなりにあります。
普段目に触れない部分とはいえ、見えないところまで抜かりなくキッチリ仕上げたいのが職人気質というもの。
一旦パーツをすべて取り外し、綺麗に金粉を吹き直しました。
ミニピアノ(トイピアノ)の為コストダウン重視で制作されていたのか、
左のペダルは飾りで取り付けられているだけで、本来のソフトペダルの機能はありませんでした。
そこで、なんと専用天秤(ペダルの動力を伝えるパーツ)とハンマーレールを新たに作成し、
ソフトペダルの機能を果たせるよう作り変えました。
ケース(外枠)も1から作成しました。
外装のコンセプトは、磐田市公式イメージキャラクター”しっぺい”で、
しっぺいのキャラクター設定を考慮し、和室にあう雰囲気に仕上げるべく、
日本の古民家にあるような古い家具をイメージしたカラーリングとなっております。
この後の工程のお写真でご覧いただけますが、前面にしっぺいデコパーツを取付け、
さらに磐田市のシンボルマークをイメージした模様も取り入れました。
このような特徴的な見た目のピアノですが、実は前面のパネル(上前パネル・下前パネル)は
なんとリバーシブルになっており、ひっくり返して取り付けると
無地のモダンな雰囲気に早変わりする仕様となっております。
磐田市のHPにも掲載していただき、公式に販売を行った”しっぺいデコパーツ”(現在は販売終了)
なんとこれも弊社で1から作成しました!
このような高い精度を要求される作業が出来る技術があるからこそ、
より良い修理をお客様にご提供できるといえます。
アクション・鍵盤は基本的に既存の物を調整・クリーニングしました。
画像は、これらを元の通りに取り付けた様子です。いよいよ形になってきました。
上前パネル・下前パネル・天屋根・ペダルといったケースやその他の部品を取り付け、
仕上げに整調・整音・調律等の作業を行いました。これでピアノとしては完成です!
しっぺいデコパーツ等の装飾部品を取り付けて、完成です。新たにしっぺいピアノに生まれ変わりました!!
(右上の写真は、パネルのリバーシブルを使用し、裏面にした時の様子です。)